1. ポリシーについて
- ポリシー
強化学習では 現在の「状態」に応じて、次の「行動」を決定します。
この次の「行動」を決定するための戦略。
具体的には「ある状態である行動を行う確率」をポリシー(方策)と呼びます。
ML-Agentsにおける「ポリシー(Policy)」とは、エージェントがどのように行動するかを決定するルールやアルゴリズムのことを指します。具体的には、エージェントが環境における観測(Observations)を受け取ったとき、それに基づいてどの行動(Actions)を選択するかを定義するものです。
強化学習において、ポリシーは通常、次の2つの方法で表現されます。
1. 決定論的ポリシー(Deterministic Policy)
- 特定の観測に対して常に同じ行動を選択します。
- 例えば、「観測Aのときは常に行動Xをとる」といった単純な規則に基づいて行動が選ばれます。
- 決定論的ポリシーは、エージェントの行動が確定的である場合に使用されますが、学習の初期段階では探索の幅が狭くなりがちです。
2. 確率的ポリシー(Stochastic Policy)
- 特定の観測に対して複数の行動の中から確率的に選択します。
- 例えば、「観測Aのときには80%の確率で行動X、20%の確率で行動Yを選ぶ」というように、行動が確率的に決まる仕組みです。
- 確率的ポリシーは、探索と利用のバランスをとるのに適しています。探索(未踏の領域を試すこと)を行いつつ、すでに良いと分かっている行動(利用)も取るため、強化学習でよく使われます。
ML-Agentsにおけるポリシーの動作
ML-Agentsでは、エージェントはニューラルネットワークをポリシーとして使用することが一般的です。これにより、エージェントが観測した環境の情報を元に、最適な行動を選択する方法を学習します。ニューラルネットワークのトレーニングは強化学習アルゴリズム(例: PPO)によって行われます。
ポリシーの役割
- 観測の処理:
- ポリシーはエージェントがセンサから得たデータ(観測値)を入力として受け取ります。観測値はエージェントが環境をどのように認識しているかを示します。
- 行動の決定:
- ポリシーは、観測値を基にして行動を出力します。これらの行動は、エージェントが環境内でどのように移動するかや、他のエージェントとのインタラクションに影響を与えます。
- 学習と改善:
- エージェントが行動を実行すると報酬を得ます。ポリシーは、その報酬を基に行動の選択を改善していきます。この過程は「強化学習」と呼ばれ、エージェントがより高い報酬を得るためにポリシーが学習されていきます。
ポリシーの学習
- PPO(Proximal Policy Optimization)などのアルゴリズムを使って、ポリシーがエージェントの学習中に徐々に改善されます。これにより、エージェントは、トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、最適な行動を見つけるように進化します。
ポリシータイプ
ML-Agentsでは以下のポリシーが選べます:
- 学習ポリシー:
- ニューラルネットワークをトレーニングし、環境から学び続けるポリシー。
- ヒューリスティックポリシー:
- 人間が決定したルールに基づいて行動を選択するモード(人間が操作する場合など)。
実装例
例えば、ML-Agentsでの実装では、次のようにポリシーを設定します:
BehaviorParameters behaviorParameters = GetComponent<BehaviorParameters>();
behaviorParameters.BehaviorType = BehaviorType.Default; // 学習ポリシー
ポリシーはML-Agentsを使ったエージェントのコア要素であり、エージェントがどのように学習し、行動を最適化するかを司ります。
ポリシー更新
ポリシー更新とは、エージェントが環境から得た経験に基づいて、エージェントの行動選択を改善するためにポリシー(行動ルールや方針)を調整するプロセスのことです。具体的には、エージェントが強化学習のトレーニングを通じて「より良い」行動を学習するために、ニューラルネットワークの重み(パラメータ)を更新します。
ポリシー更新の流れ
強化学習におけるポリシー更新の主なステップは次の通りです。
- 環境の観測と行動の選択
- エージェントは環境を観測し(観測データ)、その観測に基づいてポリシーが行動を決定します。この行動はポリシー、通常はニューラルネットワークを使って選ばれます。
- 環境からのフィードバック(報酬)
- エージェントが行動を実行すると、環境からフィードバックとして「報酬」を得ます。この報酬は、行動の結果としてエージェントがどれだけうまくいったかを示す指標です。
- ポジティブな報酬(例: ゴールに近づいた)は、行動が良かったことを示し、ネガティブな報酬(例: 崖から落ちた)は行動が悪かったことを示します。
- 経験の蓄積
- エージェントは、観測、行動、報酬、および新しい状態のデータを「経験」としてメモリ(経験バッファ)に蓄積します。この経験を元に、後でポリシーを更新します。
- 勾配降下法によるポリシー更新
ML-Agentsにおけるポリシー更新の仕組み
ML-Agentsでは、PPO(Proximal Policy Optimization)というアルゴリズムが使われており、エージェントが効果的に学習できるようにポリシー更新を行います。
1. 経験の収集
- エージェントは、複数のエピソードをプレイし、そこで観測、行動、報酬のトリプルを記録します。これらは「経験バッファ」に格納されます。
2. PPOによるポリシー更新
PPOでは、次の要素に基づいてポリシーを更新します:
- クリッピングされたポリシー更新: PPOは大幅なポリシーの変更を避けるために、ポリシーの更新が急激になりすぎないよう制約を設けています。これにより、安定して学習を進めることができます。
- アドバンテージ推定: アドバンテージ関数を用いて、どの行動がどれほど価値があったかを評価し、その情報を基にポリシーを改善します。
3. ニューラルネットワークのトレーニング
- 収集した経験に基づいて、ニューラルネットワークのパラメータ(重み)を更新します。これにより、次に同じ状況が発生した場合、エージェントはより良い行動を選択する可能性が高くなります。
4. エージェントの学習の進行
- 学習が進むにつれて、エージェントは繰り返し環境から学び、ポリシー更新を行い、最終的に環境に対して最適な行動を選択できるようになります。
ポリシー更新の要点
- ポリシー更新は、エージェントが観測に基づいてより良い行動を選択するようにニューラルネットワークの重みを調整するプロセスです。
- 強化学習では、エージェントが得た報酬を最大化するために、ポリシーを改善する方法を学習します。
- ML-Agentsでは、PPOが主なアルゴリズムとして使われており、これによりエージェントは安定的に学習を進めます。